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現時点までにわかっている今回の調査結果

各種鳥類の分布状況

 ここまでに得られた現地調査およびアンケート調査の結果を使って以下のような分布図を作成しています(最新分布図:2/21更新)。調査登録者の方には,全種の分布図が見られるURLをお知らせしています。

ホトトギスの分布図


分布状況の変化

 ここまでに得られた現地調査の結果と,1997-2002年に行なわれた現地調査の結果を比べ,「1990年代に記録されたけど今回は記録できなかったコース」「前回も今回も記録されたコース」「今回新たに記録されたコース」に分けて集計してみました。その結果からは,大型魚食性の鳥および外来鳥の増加が続いており,小型の魚食性の鳥の減少も続いていそうだということがわかりました。また,減少してレッドリストに掲載されるまでになった夏鳥たちが,復活傾向にある可能性もみえてきています。ただし,まだ調査地点数が少ないので,今後データが集まるにつれて傾向が変わる可能性もあり,注意が必要です。



魚食性の鳥,外来鳥,留鳥と夏鳥の分布変化の違い。大型の魚食性の鳥や外来鳥,夏鳥は1990年代と比べて消失したコースが少なく,新たに出現したコースが多いことより分布が拡がっていることがわかる。そして,小型の魚食性の鳥は逆で,分布が縮小している。留鳥は一定の傾向が認められず,分布に大きな変化はないと思われる。



キビタキの分布変化の標高差,地域差。低標高地で,そして西の地域で新規出現コースが多い


 その他の種の結果はこちら


過去2回の調査でわかってきた日本の鳥の現状

 1974-1978年と1997-2002年に行なわれた調査により,日本の鳥の変化が見えてきています。そして,減少している鳥がレッドリストに指定されたりして保護が進められています。ここでは,特徴的な分布の変化をご紹介します。


地域的な違い

 個々の鳥をみていくと、分布の変化は種によって、地域によって様々です。そのなかで特に目立つのは、首都圏および関西圏の鳥の減少とともに、北海道・東北地方の変化がほかの地域と異なっていることです。
 たとえば全国的にみると分布を縮小させしているセンダイムシクイやカワガラス、サシバ(北海道にはいません)などは北海道・東北地方では逆に分布を拡大していました。また、ヤブサメ、ミソサザイといった種は他地域ではあまり変化がないのですが、北海道・東北地方では分布が拡大していました。
 このような地域的な傾向が見られる理由はよくわかりません。南方から分布が拡大したような状況になっているので、「温暖化の影響」といわれがちな状況ではあります。確かに昆虫の分布には気温は重要な要素で、鳥にとっても温暖化で食物条件が変わる可能性はあります。ただ、このような短い時間スケールのなかで鳥たちの分布に係るような影響がでるのでしょうか?今回の調査と合わせるともう少し見えてくるかもしれません。
 また、九州も他地域と少し様子が異なっており、キジバト、カワラヒワ、ムクドリ、ハシボソガラスなどの他地域では変化がないかあるいは分布が縮小傾向にある種の分布が拡大していました。


サシバの分布状況の変化。西日本は減っているのに,東北地方は増えているのがわかる
:繁殖確認,:繁殖の可能性の高い場所,:繁殖の可能性のある場所.
環境省 鳥類繁殖分布調査(2004)の図を改編

若齢林・草原性・湿地性の鳥の減少

 最近、鳥たちの減少というと、夏鳥の減少が注目されてきました。中でも、アカショウビンやサンコウチョウといった森林性の鳥の注目度が高かったように思います。もちろん、それらの鳥たちも減少しているのですが、それ以上に若齢林・草原性・湿地性の鳥の減少が著しいことがわかってきました。ヨタカやモズ類のような若齢林の鳥,ウズラ、シマアオジ、ヒバリといった草原性の鳥やヒクイナ、タマシギ、ヨシゴイといった湿地性の鳥たちです。ヒクイナは特に関東周辺の減少が著しいのですが、栃木で行なったヒクイナの詳細な分布調査でも同様の結果が得られました。1960年代から1980年代にかけてヒクイナが確認されていた場所15か所で1995年と1996年に調査を行なったのですが、わずか3か所でしかヒクイナを確認することはできませんでした(平野 2004)。
 減少の原因については、よくわからない部分が多いのですが、東京のヒバリについては畑の減少や耕作物の小麦から野菜への転換が主要な原因と考えられています(植田ほか 2005)。地域によっては減反で水田が麦畑になってヒバリが増えたところもあり、地域により状況、減少の原因も様々なのだと思います。シマアオジについては、乾燥化によって草原の質が変わっていること、渡りの中継地である中国での大量捕獲などいくつかの仮説が出されていますが(玉田 2009)、よくわかっていません。
 ヒクイナ、タマシギなどの水田への異存度の高い鳥については、耕地整備が進み、乾田化した影響も大きいのではないかと思われます。乾田化するとカエル類やフナやドジョウなどが減少することが知られています。またU字溝の設置による小動物やヒナの転落も影響しているかもしれません。


ヒバリの分布状況の変化。繁殖の確認された場所が大きく減少している
:繁殖確認,:繁殖の可能性の高い場所,:繁殖の可能性のある場所.
環境省 鳥類繁殖分布調査(2004)の図を改編


河原・砂礫地の鳥の減少

 チドリ類、イソシギ、コアジサシといった河原や砂礫地に生息している鳥の減少も目立ちました。河川の改修により中州が削り取られたり、河原が公園やグラウンドとして利用されるようになったり、治水により,氾濫が減り,草が生えて砂礫地でなくなるなど環境の変化もおきています。こうした,生息環境の減少により河原や砂礫地に生息している鳥も減少したのだと思われます。鳥たちだけでなく、カワラノギクなど河原の植物の多くも、同様の理由により絶滅に瀕しているとのことです。
 こういった自然の砂礫地の代替地として、造成まもない埋立地などもこれらの鳥たちの営巣地として利用されています。しかし、造成地も1970年代には高度成長期で多くありましたが、現在は工業地として利用されたり、草が生えて砂礫地でなくなったりして減少しています。
 また、良好な状態で残っている場所でもアウトドアブームで河原でバーベキューやキャンプをする人たちが増え、そのせいでうまく繁殖できなくなってしまった場所もあるということです。埼玉県の河原ではイカルチドリが(内田 1992)、三重県の海岸ではシロチドリが(平井ほか 2000)、人のレジャー活動によって踏み潰されたり、訪れる人を警戒して繁殖に失敗したりと繁殖成績が極めて低くなってしまっていることが報告されています。


シロチドリの分布状況の変化。
:繁殖確認,:繁殖の可能性の高い場所,:繁殖の可能性のある場所.
環境省 鳥類繁殖分布調査(2004)の図を改編


大型の魚食性の鳥の増加と小型魚食性の鳥の減少

 カワウ、ダイサギ、アオサギなどの大型の魚食性の鳥の分布が広がり、カイツブリ、コサギ、ササゴイなどの小型魚食性の鳥の分布が縮少していることがわかりました。
 大型の魚食性の鳥は水質の悪化、農薬による死亡などで一時期分布が縮少していたのが、その改善により回復してきている部分も大きいと考えられています。こういった化学物質は、生物濃縮により食物連鎖の上位に位置する動物により強く働きます。プランクトンを小型の節足動物が食べ、それを小型の魚が食べ、さらにそれを大型の魚が食べるといった流れの中で有害物質が濃縮され、影響が大きくなってくるのです。その大型の魚を食べる大型の魚食性の鳥への影響は小型の魚を食べる鳥たちと比べると影響が大きかったと考えられるのです。
 それに対して小型魚食性の鳥が減った原因としてはオオクチバス(ブラックバス)の問題が考えられます。オオクチバスは小型の魚やエビなどを捕食するのでオオクチバスが増えた場所では小型の魚が少なくなります。そうすると、食物の少なくなった小型魚食性の鳥たちは減少すると考えられるのです(佐原 2005,嶋田ほか 2005)。


アオサギの分布状況の変化。
:繁殖確認,:繁殖の可能性の高い場所,:繁殖の可能性のある場所.
環境省 鳥類繁殖分布調査(2004)の図を改編


小型の樹洞性の鳥の増加

 分布図では変化は見えないけれども、調査コースごとの比較から減少あるいは増加がみられた鳥もいます。たとえばシジュウカラ、ヤマガラ、キビタキなどの小型の樹洞性の鳥たちが増えていることがわかりました。都市近郊で言えば、1970年代には細い苗のような木だった公園や街路樹などの樹木が生長し、樹洞ができるまでになり、こういった鳥たちが生息できる環境ができてきたということが理由として考えられます。また、里地については、薪がエネルギーとしてほとんど使われなくなったこともあって、雑木林が以前のように細かくは管理されなくなり、枯れ木や枯れ枝が増え、これらの鳥たちに営巣場所を用意することになったのかもしれません。ただ、日本は山地の多い国なので、都市や里地は全体的に見ると小さな部分だと思います。したがって、上に述べた原因以外に大きな理由があるのだと思いますが、よくわかりません。


身近な鳥の減少

 スズメ、ムクドリ、ツバメ、キジバトなどの身近な場所にいる鳥が減少していることが示されました。スズメはこの調査以外の調査でも減少していることが示されていますし(三上 2009)、ムクドリについては、栃木県での減少報告が示されています(樋口 2005,平野 2005)。ムクドリについては東京の多摩地域で見ていると,逆に増加しているようにも感じられるのですが、ぼくたちが個人として感じることができる実感というのは極めてローカルな場所での感覚ですから、全国で起きている状況とはずれがあるのかもしれません。
 極端な都市化によってもこれらの身近な鳥たちは減少しますが、中山間地では過疎化や人口の減少によっても身近な鳥の生息状況は影響をうけます。こういう正反対の要因や人の活動圏だけに、人間側の事情によってさまざま生息環境の変化がおき、その影響で減少しているのだと思います。たとえば、スズメやムクドリでは機密性の高い住宅への変化によって巣穴が不足しているかもしれませんし、ツバメでは、建物の外壁がツルッとした壁になったことで、巣をかけられる壁が減ったかもしれません。




 20年経った今,さらに鳥の世界には動きがあると思います。個々の場所では見ていては気づかなかったことが,全国の情報を集めることによって見えてくると思います。どのような変化が起きているのか,みんなの力をあわせて,調べてみませんか?


報告書

環境省生物多様性センター(2004)種の多様性調査 鳥類繁殖分布調査報告書
各種鳥類の分布図を見ることができます

詳細な解析の結果

○減少している鳥の特性(バードリサーチNews紹介記事)
 結局のところ、減ってるのはどんな鳥?【天野達也】  元の論文 
○成熟林の鳥より若齢林の鳥の方が減っている(バードリサーチNews紹介記事)
 土地利用の変化は日本の鳥類の分布を左右するか?【山浦悠一】  元の論文
○人の土地利用の歴史が鳥の分布に影響している?(バードリサーチNews紹介記事)
 気候と地形だけじゃない!土地利用が広域的な生物多様性を決定する【山浦悠一】  元の論文


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